外科的合併症と対応

インプラント治療は一般社会に認知され、治療を希望される患者さんも急速に増加してきているのが現状です。また、大学の学生授業にも取り入れられ、大学だけでなく一般開業施設でも応用する臨床医が増えてきています。
近年、新しい術式の確立やマテリアルの開発から適応症の拡大、より低侵襲な手術へと臨床応用されてきています。
 適応症の拡大から、骨移植ケースや多数歯欠損症例等の困難症例に臨床応用する機会もあります。必然的に高年齢の方が多くなり、また手術時間の延長、麻酔量の増加、よっておこる患者の肉体的、精神的負担の増加などにより、全身的なリスクが高くなることは否めません。
 また、比較的手術時間、術後の腫れや痛み、出血も少ない低侵襲手術に代表されるフラップレスサージェリーやガイドサージェリーのトラブルも報告されています。まさに科学(デジタルテクノロジー)を信じ過ぎることによるヒューマンエラーです。  安易に臨床応用したり、不用意や不適切な術式から血管を損傷する、神経麻痺を起こさせる、他の部位に迷入するなどという報告も多々発生し、トラブルになっていることも少なくありません。
 多くのトラブルは一つのことからだけでは起こりません。ヒヤリーハットやスイスチーズのように、事前にいくつかのインシデントが起こっている、またはくぐり抜けて起こることが多く、それが大きなトラブルになります。要するにトラブルはその殆どが人によるものと思われます。そのなかには術者自身の考え方から起こる場合も少なくない、「明日は一本だ」とか「今日は骨が充分だから簡単だ」意外と基本的なケースで遭遇することもみられます。
 患者さんが安心して治療をうけていただく為に、確実性のあるインプラント治療を展開するために、適応症を守り、正しい知識、技術、考え方、さらに正しい情報収集、ネットワーク、チームワークが重要と考えております。大事な事はいつ起こりえるかもしれない偶発症に対し備え、また危険を察知して未然に防ぐ、そして起こったときの早期の対応が重要と思います。今回は起こった事象を検討してその対応法や予防法に、ついて当院でいつも行っている事を含めてお話ししたいと思います。また、これからの超高齢化社会に全身的な管理も含めてお話ししたいと重います。いかなる場合も万全なる準備と心構えをもって手術に望むことが肝要です。