インプラント何年持つのか?(1)

インプラントの父、ブローネマルク医師がはじめて手術をした患者のインプラントは、亡くなるまでの約41年間、問題なく機能し続けました。また、同じくブローネマルク医師が1967年に手術をした患者は存命中で、現在まで44年間、よい状態を保っているそうです。
 このような例があると、インプラントは一生もつものだと期待したくなります。実際に、インプラントを手がける医師の多くが「一生もたせるつもりで手術やメンテナンスをしている」といいます。では実際のところは、どうなのでしょうか。
 大学病院初のインプラント専門診療科である、日本歯科大学病院インプラント診療センターがまとめた表は、同センターのデータと、欧米で多く引用される論文のデータを掲載しています。それによると、インプラント(ブローネマルクインプラント)の10年間の累積残存率は、歯がまったくない無歯顎の下あごが最も成績がよく、98%。逆に最も成績が悪いのが、無歯顎の上あごの70%です。部分欠損ではどれも90%を超えていますが、やはり下あごのほうが成績がいいことがわかります。
さてここで、もっとも成績のよいデータである98%の残存率について見てみましょう。歯のまったくない下あごに入れた、ほとんどのインプラントは、10年以上もつ、という喜ばしい成績です。しかしこれも厳しい見方をすれば、100本インプラントを入れたら、2本は10年間のうちにダメになってしまう、ということを表しています。

1本だめになったら全滅?

 また、オールオンフォーの残存率について、重原聡歯科医師は、このような見方をしています。
「インプラントの生着率(インプラントと骨がしっかり結びつくこと)は98%とも97%とも言われています。これは、100本のインプラントのうち約3本がダメになるということです。4本のインプラントで考えてみてください。仮に100本のインプラントをということは一人に4本用いますから25人の患者さんということになります。そのうち3本のインプラントが正着しないということは10%の患者さんにトラブルが起きるということでもあります。これはインプラントの治療法としてかなり失敗率が高いことになります。また、4本のインプラントのバランスで12ないしは14本の上部構造(歯の部分)を支えているという性質上、1本失うと治療法の変更(義歯になる)か再手術が必要になります。
 インプラントがどれだけもつかは、残存率や生着率、手術の善し悪しだけでなく、メンテナンスにもかかってきます。医療に100%はあり得ませんが、リスクを少しでも減らすためには、よい歯科医師を選び、自分でもメンテナンスをしっかり行なって、患者側が主体的に歯を守る意欲が大切です。