インプラント何年持つのか?(2)

どんなに高齢でもいいのか?

 骨の成長が続いている子どもにインプラントを埋入(まい・にゅう)すると、骨とくっついて埋没してしまう可能性があります。そのため、女性は18歳、男性は20歳以降から、インプラントができる、ということになっています。しかし個人差がありますし、病気などによっては早くに入れたほうがいい場合もありますので、歯科医師とよく相談してください。
また高齢者は、手術が問題なくできる体調であればいくつになってもインプラントを入れることは可能、ということになっています。しかし、老年歯科医学が専門の、日本歯科大学病院口腔介護・リハビリテーションセンター長の菊谷武歯科医師は、多くの高齢者を見ていると、インプラントが最良の選択肢ではない場合が多い、と言います。
「インプラントの利点はいくつかありますが、とくに高齢者は、食べ物をおいしく食べることを目標としていることが多いはずです。また、歯があることによって、しっかりかめて飲み込めるようになり、誤嚥性肺炎(飲食物が誤って気管に入り、口の中の細菌が肺に入り引き起こされる)を防げるという意義もあります。しかし、高齢者が、かめない、飲み込めない理由は、歯がないことや入れ歯がないことだけではありません。運動機能の低下、障害によって、かめなくなることがあるということを理解していない歯科医師は多く、そのため簡単にインプラントをすすめてしまい、あとでメンテナンスができなくなったり、インプラントを入れてわずかな期間でものがかめなくなったりしています」
 インプラント治療をする人が増えたことに対応して、歯科業界でこれから大きく問題になろうとしているのは、要介護者のインプラントのメンテナンスです。家族以外ではだれがメンテナンスをするのか、高齢者施設では、訪問ではどうするのか、保険の問題はどうするか。これからインプラントを入れようとする人も、手術をする歯科医師側も、ともに考えていかなければならない問題です。
「インプラントはさらに、自分の歯よりプラーク(歯垢)がつきにくい、という利点もあります。要介護者、高齢者のインプラントのメンテナンスがしっかり行われていない場合でも、トラブルは必ずしも起こっていないのです。こうした利点を広く知ってもらう意味でも、インプラントに携わる人たちが、自分たちでコンプライアンス(法律や社会規範などに背くことなく活動すること)をつくっていくことが求められていると思います」(菊谷歯科医師)